夏季休暇は、大学生にとって授業期間中とは比べものにほどの自由な時間を過ごせる貴重な期間です。旅行やアルバイト、趣味やサークル活動など、普段できない経験を積むチャンスでもあります。
しかしその一方で、行動範囲の拡大や交友関係の広がりが、思わぬトラブルや事故につながるケースも少なくありません。特に飲酒や喫煙といった法令違反、交通事故、アルバイト先でのトラブル、SNSをきっかけとする炎上など、夏休みならではのリスクは多岐にわたります。
大学職員としては、「何かあったら対応する」だけでは遅く、あらかじめ予防的なアプローチを行うことが不可欠です。本記事では、夏季休暇中に学生が起こしやすい代表的なトラブルと、その予防策を実務視点で整理します。
夏季休暇中に起こりやすい学生トラブル
飲酒に関するトラブル
夏のイベントや旅行先では、普段お酒を飲まない学生でも飲酒の機会が増えます。
特に注意すべきは以下のケースです。
- 未成年飲酒:法律で禁止されているにもかかわらず、周囲に流されて飲むケース。
- 急性アルコール中毒:短時間で大量に飲み、救急搬送される事例。
- サークル・合宿での集団飲酒:大人数での飲酒は抑止力が働きにくく、ルール違反が発生しやすい。
大学側は、長期休暇前に「未成年飲酒の法的リスク」や「急性アルコール中毒の危険性」を具体例とともに周知する必要があります。
喫煙に関する違反
飲酒と同じく、喫煙も未成年には禁止されています。電子タバコや加熱式タバコなど、新しい形態の製品を「安全そう」「バレにくい」と誤解して使う学生も増えています。
また、旅行先や公共の場での喫煙による苦情も少なくありません。特に海外では国ごとの規制が厳しく、日本では問題ない場所でも罰金の対象になるケースがあります。
交通事故・運転トラブル
免許を取得して間もない学生が友人とドライブやツーリングに出かけ、事故を起こす事例は毎年報告されます。
- 無免許運転や無保険運転
- 原付・バイクでのスピード超過
- 長距離運転による疲労事故
交通事故は本人だけでなく相手方や家族にも大きな影響を与えるため、大学としても事前に注意を呼びかける価値があります。
旅行・外出先でのトラブル
夏は海や川など水辺での活動が増える時期。水難事故や熱中症による救急搬送も目立ちます。
さらに、海外旅行ではパスポートの紛失やスリ被害、現地での法律違反などが問題化します。特に留学や短期研修と混同して「大学が守ってくれる」という誤解を持つ学生もおり、自己責任の範囲を理解させることが重要です。
SNS・ネット上のトラブル
長期休暇はSNSの利用時間が増える傾向があります。
- 飲酒や喫煙の様子を投稿 → 拡散・炎上
- 他人の顔や個人情報を無断でアップ → プライバシー侵害
- 匿名と思い込み中傷投稿 → 名誉毀損・法的措置
これらは一度拡散すると完全な削除が困難で、就職活動にも影響を及ぼします。
アルバイト先でのトラブル
夏休みは短期・長期問わずアルバイトを始める学生が多くなりますが、以下のような問題が発生します。
- 法定労働時間を超える勤務
- 危険作業や深夜勤務による事故
- 給与未払い、契約条件の不履行
大学としては、学生が「労働契約書の確認」「勤務条件の適法性」を意識するよう促す必要があります。
大学職員としてできるトラブル予防策
事前の注意喚起
休暇直前のタイミングを捉えて、学生に向けた注意喚起を実施します。
<主な周知方法の例>
- 学生ポータルの掲示
- 大学公式LINEやSNSアカウントでの発信
- 一斉メール配信
- 学内掲示板や放送による案内
注意喚起文例(飲酒・喫煙注意)
夏季休暇中は、旅行やイベント等で飲酒・喫煙の機会が増えます。未成年飲酒や喫煙は法律で禁止されています。また、急性アルコール中毒は命に関わる危険があります。皆さん一人ひとりの自覚と行動が、安全で充実した休暇につながります。
サークル・部活への周知
団体活動では、事故や規律違反が一気に拡大する可能性があります。休暇前に顧問教員や代表者を集めて「活動時の禁止事項」「万一の際の報告ルート」を明確に伝えることが重要です。
相談窓口の再案内
- 大学の緊急連絡先(学生課直通、夜間警備員、保健管理センターなど)
- 24時間対応の相談窓口(警察相談専用電話♯9110、厚生労働省ホットラインなど)
- 海外渡航時の大使館・領事館連絡先
学生が「困ったらすぐに連絡できる」状態を整えることが、被害の拡大防止につながります。
職員間での対応マニュアル共有
万一トラブルが発生した場合、初動対応が遅れると事態が悪化します。
休暇前に「誰に報告するか」「情報はどう共有するか」を職員同士で確認しておくことが必要です。特に休暇中は担当者が不在の場合もあるため、代替連絡先を必ず決めておきます。
おわりに
夏季休暇は学生にとって成長の機会である一方、法令違反や事故、トラブルが増える時期でもあります。大学職員としては、事前の注意喚起と、緊急時の連絡体制の整備が何より重要です。
予防は「学生への周知」と「職員間の準備」の両輪で成り立ちます。休暇前のひと手間が、大きな事故や不祥事を未然に防ぐことにつながります。
学生が安全で有意義な夏休みを過ごせるよう、私たち職員ができることはまだまだあります。この夏、あなたの大学でもぜひ予防策の見直しをしてみてください。
以上、お読みいただきありがとうございました!