令和6年度「私立大学等改革総合支援事業」の選定結果を徹底分析!

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こんにちは、ここあです。

令和6年度の「私立大学等改革総合支援事業」の選定結果が文部科学省より公表されましたね。
私立大学等改革総合支援事業は、教育及び研究面からの大学改革に組織的・体系的に取り組む私立大学等を選定し、当該大学等の財政基盤の充実を図るため重点的に支援するもので、2013年度に開始して以降、現在まで12年間続いています。

本記事では、選定結果の詳細データを基に、収容定員規模別・都道府県別の選定状況、さらに委員長所見から見える今後の課題について深掘りして分析します。

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令和6年度の「私立大学等改革総合支援事業」では、以下の4つのタイプに分類して支援が行われました。

タイプ1「『Society5.0』の実現等に向けた特色ある教育の展開」
タイプ2「特色ある高度な研究の展開」
タイプ3「地域社会の発展への貢献」(地域連携型及びプラットフォーム型)
タイプ4「社会実装の推進」

各タイプの選定状況や詳細なデータは、文部科学省の公式ウェブサイトで公開されています。
詳細はこちらからご確認ください。

令和6年度改革総合支援事業選定結果

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自身の所属大学の選定状況は是非とも確認しておきましょう!

まず、収容定員規模別に見た選定状況を分析しました。タイプ1~4(タイプ3 PF型を除く)のデータを見ると、以下のような傾向が浮かび上がります。

  • 大規模校(収容定員5,000名以上)は、比較的選定されやすい傾向があります。組織体制や財務基盤がしっかりしていることが要因と考えられます。これらの大学は、経営の安定性に加えて、研究機関としての機能も充実しており、国際的な共同研究などにも積極的に関与しているケースが多いです。
  • 中規模校(収容定員1,000~5,000名)は、取り組みによって選定率に差が出る傾向が見られました。特に、独自の教育プログラムや地域連携の強化に力を入れている大学は、評価が高いようです。一方で、財政基盤が弱い大学は、経営の持続可能性が問われる場面もあります。
  • 小規模校(収容定員1,000名未満)は、選定数が少ないものの、特色のある取り組みを行っている大学も選ばれています。例えば、少人数教育の強みを活かしたカリキュラム設計や、特定分野に特化した専門教育が評価されることが多いです。

このことから、特に中規模以下の大学では、どのような取り組みが評価されるのかを見極めることが重要といえそうです。近年では、規模に関係なくデジタル教育の推進やグローバル化が求められており、それに対応できるかどうかが選定の鍵となっています。


次に、都道府県別のデータを分析しました。エリアごとに見ると、選定される大学には地域ごとの特色が表れていました。

  • 関東・近畿エリアは、選定数が多く、産学官連携や教育改革を積極的に進めている大学が目立ちます。特に都市部では、企業との共同研究やインターンシップ制度の充実が進んでおり、即戦力となる人材育成に力を入れている大学が多く選定されています。
  • 地方エリア(北海道・東北・九州など)では、地域密着型のプラットフォームが構築されるケースが多く、地方創生や地域貢献を軸とした取り組みが評価されていることが分かります。例えば、地域の企業と連携し、実践型の教育プログラムを実施する大学が増えています。

このように、地域によって大学の戦略が異なることが、選定状況にも反映されていると考えられます。今後は、地方の大学においても、全国的なネットワークを活用した取り組みが求められるかもしれません。

最後に、各設問ごとの回答状況を見てみましょう。

  • 教学マネジメントやIR機能の強化など、データに基づく大学経営の高度化を進める取り組みは、多くの大学が選定されています。具体的には、IR(Institutional Research)の活用を強化し、教育成果の可視化に取り組む大学が増えています。
  • 産学官連携や地域貢献の取り組みは、地方の大学が積極的に取り組んでいるものの、規模によって実施のしやすさに差が出るようです。地域のニーズに対応した教育プログラムを提供できるかどうかが、選定のポイントになっています。
  • デジタル教育やICT活用については、GPA制度やティーチング・ポートフォリオの導入を進めている大学が高く評価されている傾向があります。特に、オンライン授業やハイブリッド型授業を積極的に展開している大学は、選定の可能性が高まっています。

このことから、単に新しい制度を導入するだけでなく、大学全体での活用度や実践の深さが選定のポイントになっていることが分かります。

選定結果とともに公表された委員長所見では、以下のとおりコメントされています。

全体の申請としては、全私立大学等の約6割にあたる535校から申請があり、すべて
のタイプにおいて、比較可能な多くの設問の得点が上昇傾向である
ことを鑑みると、各大
学等における改革の取組は着実に進捗していると評価できる。一方で、昨年度からの設問
内容の見直しや新設した設問については、実施率が低い
ものもあり、引き続き、各大学等
の取組に期待したい。

また、「各大学等への期待」についても一部抜粋します。

・大学等において教育の質を保証しその不断の向上を図ることは、本事業への申請の有
無に関わらず重要である。本事業も12年目を迎えたところであり、私立大学等全体と
して教学改革の取組の重要性について、理解が浸透してきたことを鑑みると、今後、本
事業に申請する大学等においては、教育及び研究力の向上にむけた更なる改革の進捗が
期待される。
大学改革を円滑かつ効果的に進めるには、具体的な目標や行動計画を策定した上で、
進捗状況のフォローアップを行い、その結果を次の改善に繋げることが重要
である。本
事業を大いに活用していただき、各校におけるPDCAサイクルの充実に向けて歩みを
進めていただきたい。また、申請校及び選定校の設問の回答状況等のデータや分析結果
を公表しており、各大学等の取組状況の相対化・見える化に役立てていただきたい。
・選定された大学等にあっては、本事業への選定をゴールではなく次なる改革に向けた
通過点として取組の深化を追求することを期待する。
選定されなかった大学等にあって
も、本事業に応募すべく取り組んだ成果を基盤として、更なる改革・改善を目指して取
組を進めていただきたい。

各コメントを通して、改革総合支援事業は一定の成果をあげていることへの文部科学省の自負と、次年度以降も継続して本事業の実施が見込まれていることが確認できます。

今回のデータ分析を通じて、私立大学等改革総合支援事業において選定されるためには、以下の点が重要であることが見えてきました。

  1. 大学の規模に応じた戦略を立てること(特に中小規模大学は特色を明確にする)
  2. 地域特性を生かした取り組みを進めること(地方創生・産学官連携など)
  3. データに基づいた教学マネジメントの強化(IR・GPA制度など)
  4. デジタル技術の積極活用(オンライン授業やAI活用など)

大学の改革が求められる時代、こうしたデータを活用しながら、戦略的に取り組みを進めていくことが、より良い大学経営につながるのではないでしょうか。

本日は、令和6年度私立大学等改革総合支援事業の選定結果について考察しました。

昨年度に引き続き、私立大学等改革総合支援事業に採択されることが一種の大学ブランディングとなっている側面もあるため、補助金獲得の観点だけではなく、広報的な側面からも重要な事業と言えます。
もちろん、不採択の大学は改革が進んでいないかと問われると決してそのようなことはないと思いますが、本事業への採択の有無が「大学力」を測るための重要な指標になっていることは間違いないありません。
調査項目を達成するためには組織レベルでの改革が求められることになりますが、一つひとつ、改革を推し進めていきたいところです。

以上、お読みいただきありがとうございました!

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