私立大学の決裁権限(意思決定プロセス)について

基礎知識編
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こんにちは。ここあです。

私立大学では、規程等で予め定められた決裁権限に基づき、日々の意思決定が行われています。決裁権限(意思決定)という言葉だけを聞くと、理事会といった会議体や役職者の権限を思い浮かべますが、非役職者の事務職員であっても、実は与えられた決裁権限に従って日々の業務を遂行しています。本日は、私立大学の決裁権限(意思決定プロセス)について勉強していきたいと思います!

ここあ
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今日も頑張りましょう!

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まず「決裁権限」の定義を確認します。Weblio辞書によると、決裁権限は「事柄の可否を決定する権利」とされています。つまり、何かを判断(意思決定)したい場合は、その事項の決裁権限を有している者の判断を仰ぐ必要があります。

それでは、私立大学の決裁権限がどのように定められているのか確認していきます。

大きく分けると、「会議」「稟議」「人(役職)」に決裁権限が与えられており、「人(役職)」<「稟議」<「会議」の順で与えられている権限が大きくなります。

会議・稟議・役職に決裁権限が与えられている

それぞれの概要を見ていきましょう!

会議

私立大学の意思決定を行う会議体は様々ありますが、理事会や評議員会の他、教学の意思決定会議(大学評議会や部長会議、学部教授会など)により重要な意思決定がなされています。

一般的に、
理事会(法人の会議体)ではヒト・モノ・カネなどの経営に関する事項、
教学の意思決定機関(大学の会議体)では教育に関する事項、
の決裁権限が与えられています。

例えば、予算案や事業計画の策定、採用人事などは理事会の決裁権限ですが、入学許可基準や卒業判定、授業に関することなどは、大学の会議体に権限があります。

ここあ
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会議体にはそれぞれ与えられた役割があるんだね!

次年度予算などを策定する場合、経理担当者が原案を作成することになりますが、経理担当者や経理部門の役職者には、次年度予算を承認する権限が与えられておりませんので、権限が付与されている理事会に議案を上程し、承認を得る必要があります。

稟議

まずは言葉の意味から確認します。Weblio辞書によると、稟議とは、「会社・官庁などで、会議を開催する手数を省くため、係の者が案を作成して関係者に回し、承認を求めること。」と定められています。つまり、人を集めて会議を開催するほどの内容ではないけど、複数の承認者の決裁が必要な場合に、稟議による意思決定が行われます。

稟議書の作成に時間と労力がかかることや承認までに時間がかかることがデメリットとして挙げられますが、会議を開くことなく承認を得られるが最大のメリットです。また、稟議の目的や内容、必要な金額などが可視化されるため、稟議の起案者と承認者の間で認識の相違が起きにくくなることもメリットと言えます。

人(役職)

役職者に与えられた決裁権限に基づき、役職者の判断のみで決済することができるパターンです。課長であれば、課に運営等に関する事項に対して権限が付与されています。また、一般課員などの非役職者であっても、恒常的な業務の判断については決裁権限が付与されているため、自身の判断で物事を処理することができます。

ここあ
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私が所属している学生対応の部署であれば、簡易的な課外活動対応や学生への教室貸出しの判断は一般課員に付与された範囲内で行いますが、一定以上の判断が必要な場合には役職者に判断を求めています!

私立大学の意思決定プロセスの傾向としては、会議集約型と個人集中型の大きく2つに分類されているように思います。それぞれの特徴を見ていきましょう。

①会議集約型(ボトムアップ型)

稟議や役職位に決裁権限を委託することなく、規程の定めに基づいて数多くの決裁事項を会議に上程し、承認を得るパターンです。規程に基づく運用であるため決裁権限が明確であり、民主的な意思決定を行うことができます。また、案件が複数の上位者の目に留まることで一定の認知が広がり、承認後の運用をスムーズに行うことができるというメリットもあります。

しかし、会議やその下準備により、起案者をはじめ会議関係者全員が長時間拘束されてしまうことも多く、意思決定に際して過剰なまでにリソースを割いている恐れがあります。また、規程に定めのない事項であっても会議に上程して承認を得るという、言わば「会議絶対主義」的な文化を構築してしまう傾向にあります。

その他にも、個人(役職)としての判断ではなく会議体として案件を承認していくため、個々人の責任の所在が曖昧になり、本質ではなく人間関係の調和を優先した判断がなされる恐れや、信念のない意志決定がなされる可能性を含んでいることが欠点であると言えます。

②個人集中型(トップダウン型)

重要な案件は特定の役職者の判断に委任し、最低限の会議のみで意思決定を行うパターンです。迅速かつ一貫性のある意思決定を行うことができるため、改革等を進めやすいというメリットがあります。また、一般企業においても活力に溢れる会社はトップダウン的な意思決定を行っている事例が数多く見受けられます。

しかし、権力の暴走やガバナンスの乱れを引き起こす恐れがあり、不正の温床になりかねないというデメリットもあります。

ここあ
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それぞれのタイプで良し悪しがありますね。

ここからは個人の見解になりますが、

① 一定の決裁権限を役職位に委託し、迅速かつ一貫性のある意思決定を行う体制を構築すること
② 稟議を効率よく活用すること
が、私立大学のガバナンスにおける重要なポイントであると考えています。

本学の場合、形式上ほぼすべての意思決定を会議で行っていますが、会議自体は完全に形骸化しており、特定の役職者に権限が集中している状態です。何を判断するにも特定の役職者の判断を仰ぐ必要があるため、事前説明のアポイントを取るだけでも数日要してしまい、意思決定まで気が遠くなるようなプロセスを踏んでいます。

もし、各担当の役職者に一定の決裁権限が付与されていれば、迅速な意思決定が可能になりますし、役職の判断を超える案件であったも、稟議を活用することで特定の役職者の判断に依存することなくなります。

以前、他大学の理事会体制について勉強する機会があり、有名私大の財務担当理事に対面でお話を伺ったことがあります。様々お話を伺う中で、その大学では、権限を担当の役職者に委託し、法人と大学の各事務局長が定期的に報告を受けることで円滑な意思決定を行っているとのことでした。

ここあ
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他大学の事例は参考になります!

本日は、大学の決裁権限(意思決定プロセス)についてお伝えしました。

大学職員としてのキャリアを積み上げていく上で、所属大学の決裁権限(意思決定プロセス)を理解しておくことは大変重要な要素です。もちろんこの問いにに正解はなく、各大学の特性によって大きく異なりますので、大学の様態に合わせた判断が必要になりそうですね。
みなさんもご自身の大学でどのような意思決定プロセスが踏まれているのか調べてみてください!

以上、お読みいただきありがとうございました!

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