徹底解説!大学設置基準(2022年10月施行)の改正概要!

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こんにちは、ここあです。

本日は、2022年10月1日より新たに施行される大学設置基準の改正案について、「大学設置基準等の一部を改正する省令案骨子案」や「大学設置基準等の改正に関する諮問内容」、「解説資料」等の文部科学省HPにて公開されている情報をもとに、改正内容について解説していきます。

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大学設置基準とは

大学設置基準とは、大学を設置するために必要な最低の基準を定めた省令であり、教員組織、教員の資格、収容定員、教育課程、校地・校舎等の施設設備、事務組織等について具体的に定めたものです。
大学はこの省令で定める設置基準より低下した状態にならないようにすることはもとより、その水準の向上を図ることに努めなければならないとされています。

大学設置基準の概要については、こちらも併せてご覧ください。

改正の目的

今回の大学設置基準の改正は、
① 「学修者本位の教育」の実現の考え方を質保証システムへと反映させること
② 必要な情報を社会に公表し社会との対話を進める「社会に開かれた質保証」を図ること

の2点を改正の方向性としています。

「学修者本位の大学教育の実現」の観点からは、教学マネジメントが適切に行われていることなど、個々の学位プログラム単位で内部質保証が機能していることが求められます。そのためには、各大学において学位プログラム毎に適切な情報が公表され、認証評価の際に、各大学で学位プログラムごとに学修成果が把握されていることや、研究成果を継続的に生み出すための環境整備等「教育研究の質」が適切に確認されることが不可欠です。

また、「社会に開かれた質保証の実現」の鍵となるものは、何よりも適切な情報が公表されていることであり、各大学による積極的な情報公表はもとより、認証評価の結果やその他の必要な情報が、社会が利用しやすい形で適切に公表されていることが求められています。

上述した改正の方向性に沿って検討が進められた結果、3つのポリシーに基づく「学位プログラム」の編成とそれを基礎とした「内部質保証」による教育研究活動の不断の見直しの考え方を根幹とし、大学設置基準が改正されました。

大学設置基準改正の目的は、
◎ 3つのポリシーに基づく【学位プログラム】の編成
◎ 【学位プログラム】を基礎とした内部質保証の取組み
◎ 内部質保証を通じた教育研究活動の不断の見直し

を実現すること!

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改正内容

それでは、改正内容を個別に確認していきましょう。

総則等理念規定の明確化について

現行制度では、学校教育法施行規則に3つのポリシーの規定はありますが、教育課程等に係る規定は大学設置基準上にあり関連性が明確ではないことや、内部質保証に基づく見直しを行うことが明確化されていないという状況です。
規程改正により、3つのポリシーに基づく教育課程の編成等や自己点検・評価、認証評価の結果を踏まえた不断の見直しを行う旨が規定上明確化され、3つのポリシーに基づく教育の実質化等による質向上が期待されます。

教育研究実施組織等について

現行制度では、教員組織として教員の役割分担、連携体制、責任の所在について規定されていますが、事務組織や厚生補導の組織や教員と事務職員等の連携及び協働については別途規定されています。
規程改正により、必要な教員及び事務職員等からなる教育研究実施組織の編制など、教員と事務職員等の関係を一体的に規定することで、教育研究活動から厚生補導まで含めた教職協働の実質化が促進され、より一層の教育研究活動の質向上が期待されます。

一方、教育研究実施組織等の改正は、学位プログラムの実施や見直しなどの教育研究活動等を行うに当たり、大学の組織機能の明確化や教員と事務職員等相互の役割分担、協働、責任の明確化等を目的としたものであり、新たな組織を設けることを求められているものではありません。現行制度と同様、既存の学内組織において、教員・事務職員等の役割・機能の関係性等が学内規定等において総合的に担保されることが求められます。

ここあ
ここあ

「教員の担当・職員の担当」といった縦割りの教育ではなく、

教職協働による質の高い教育を目指そうという考え方だね!

基幹教員制度について

現行の専任教員は基準上「一の大学に限り、専任教員となる」「専ら当該大学における教育研究に従事する」としか定められておらず、各大学にとって専任教員としての登用では慎重に判断せざるを得ない面がありました。
規程改正により、従前の設置認可審査における専任教員の考え方等も踏まえながら「基幹教員」として定義を明確化するとともに、必要最低教員数の算定においては、複数の大学・学部での算入も可能とすることなどを規定することで、教員が十分に養成されていない成長分野等において、民間企業からの実務家教員の登用の促進や、複数大学等でのクロスアポイントメント等の進展が期待されます。

今回新たに定義される「基幹教員」は、これまでの設置認可審査における専任教員の考え方や設置基準の別表で求める必要最低教員数の考え方に基づきながら、大学の各学位プログラムに責任を持つ教員として定義を明確化するものです。

基幹教員制度により、学内の教員だけでなく、学外の教員であっても学位プログラムに対し責任を有するなど一定の要件を満たす教員は基幹教員となることができ、社会ニーズに対応した迅速で柔軟な学位プログラム編成が可能となります。また、学内の基幹教員についても複数の学位プログラムに従事することが可能となり、社会ニーズに応じた新たな学位プログラムの構築・再編が容易になります。

なお、基幹教員制度について、こちらで詳しくまとめています。併せてご覧ください。

単位数の算定方法について

現行制度では、1単位の授業科目を45時間の学修を標準とされており、講義や演習は15~30時間で1単位実験や実習、実技は30~45時間で1単位と定められています。今回の規程改正により、1単位に必要な授業時間数について、授業方法別に基準を定めた規定を廃止することで、様々な授業方法を柔軟に組み合わせた授業科目の設定も可能となりました。

しかし、1単位を授業外学修も含めた45時間の学修を標準とすることは維持されていることから、従前と同様、事前・事後学修の内容についてはシラバスに盛り込む必要があるだけでなく、これらに必要な学修時間の目安を示す等の対策が求められることになります。

卒業要件の明確化について

現行制度では、大学の卒業の要件については、「大学に4年以上在学する」修業年限に係る要件「124単位以上を修得する」等の単位量に係る要件が規定されています。しかし、修業年限は『おおむね4年』の期間を指すものであり、厳密に4年間在籍することを求めるものではないことを明確化する旨の提言を受け、修業年限に係る要件が削除されます。

ただし、この改正は、例えば大学を2年で卒業することを認めるという趣旨ではなく、例えば9月入学をした学生が、学期の区分に従って4年後の6月に大学を卒業してサマースクールに参加後に、海外の大学院に進学することなども解釈上の疑義なく可能にするという内容ですので、ご注意ください。

ここあ
ここあ

あくまでも「おおむね」4年です!

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経過措置について

2022年10月1日付けで大学設置基準自体は改正されますが、施行日までに新制度に向けた準備を完了し終えなければならないわけではありません。具体的な経過措置について確認しておきましょう。

・現に設置されている大学等に対する「基幹教員」「校舎」「研究室」の規定適用
 →期限の定めなし

・施行時に設置認可審査を受けている申請(令和5年度開設等)及び施行日前の設置等に係る届出
 →施行前の規定を適用

・令和6年度に行おうとする設置等の認可の申請に係る審査
・令和5年度・令和6年度に行おうとする設置等の届出

 →大学の選択による。(施行前の規定でも、施行後の改正規定でも適用可能)

・令和7年度に行おうとする設置等の認可申請や届出
 →施行後の規定を適用

直近で学部設置や収容定員変更がなければ現行制度のままでも乗り切ることができそうですが、あまり現実的な策ではありません。特に、基幹教員制度の整備について各部門を巻き込んだ対策が不可欠です。担当部局の職員は、すぐにでも準備に取り掛かりましょう。
※もしかすると経常費補助金の要件等に絡んでくるかもしれません。

ここあ
ここあ

施行措置が設けられているとはいえ、できるだけ速やかに制度を整えていきましょうね!

おわりに

本日は、2022年10月より施行される大学設置基準の改正概要について解説いたしました。

今回の大学設置基準の改正は、本部部門・教学部門ともに大きな影響を受けることになります(主に人事系と教務系ですが)。
自身の配属部署がどこであれ、文部科学省の政策等にはしっかりと目を向け、情報を常にアップデートしていきたいですね。特に、大学設置基準や私立学校法といった重要法規の改正等は、より注力して動向を追うようにしましょう!

以上、お読みいただきありがとうございました!

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