「安定していそう」
「教育に関われそう」
「公務員に近い?」
大学職員という仕事に、そんなイメージを持っていませんか?
近年はキャリア転職先としても人気のある大学職員ですが、実際の現場には、外からは見えにくいリアルがあります。
今回は、現役の大学職員として、これからこの仕事を目指す人に知っておいてほしい“3つの視点”をお伝えします。
①「教育に関われる」は本当。でも間接的です。
大学は“教育機関”であることは間違いありませんが、職員の多くは教壇に立つことはありません。
関わるのは、教員のサポート、学生支援、カリキュラムの制度設計、留学や奨学金など、あくまで「教育が成り立つ裏側」です。
例えば、学生課に配属されれば、課外活動の支援や奨学金、保険対応など、多岐にわたる“学生の学びを支える”仕事が中心になります。
また、広報や入試の部署では、高校訪問やオープンキャンパス運営、Webサイト更新、SNS運用など「大学の顔」として外部に発信する仕事が求められます。
直接“教える”ことはなくても、「学生の人生に影響を与える節目」に立ち会う場面は多く、そうした瞬間にこの仕事の重みとやりがいを感じることが少なくありません。
②「安定志向」だけでは続けにくい時代になっている
かつては「大学職員=安定」というイメージが主流でした。しかし、18歳人口の減少や、私立大学の競争激化により、今は多くの大学が変革の渦中にあります。
業務もかつての「ルーティン中心」から、「プロジェクト型」「課題解決型」へとシフトしており、AIやDXなど新しい技術の導入にも積極的な大学が増えています。
“安定”を求めて入職したものの、「こんなに変化があるとは思わなかった」と驚く人もいるほど。
むしろ、変化の中で何ができるか、自ら考えて動ける人こそ活躍できるフィールドだと言えるでしょう。
③「大学職員」という肩書きより、「どんな貢献ができるか」
採用選考の場でも、現場に入ってからも、問われるのは「大学職員として、あなたに何ができるか」という視点です。業務の幅は広く、経理、人事、広報、教務、学生対応、入試、IR(Institutional Research)など、多岐にわたります。
選考では、民間企業での経験や、企画力・調整力・文章力などが重視されるケースも多く、「大学職員だから特殊なスキルが要る」と構える必要はありません。
大切なのは、「大学という公共性の高い場で、自分の力をどう生かせるか」を言語化できることです。
現場のリアル:「1日ずっと座ってる仕事」ではない
一見デスクワーク中心のように見えますが、実際には学生や教員との打ち合わせ、会議の出席、外部との調整業務などで、想像以上に“人と関わる時間”が多い仕事です。また、台車を押したり、荷物を運んだりと、意外と体力仕事も存在します。
部署によっては、年間スケジュールに応じて繁忙期が明確にあり、土日出勤や長時間労働が発生することもあります(もちろん代休制度や働き方改革の努力も進んでいます)。
「ホワイト職場」と言われることもありますが、それは「やりがいと責任がバランスしている」ことの裏返し。制度に守られながらも、自分から動く姿勢がないと、かえって仕事が単調になってしまうこともあります。
続けるうえでのやりがいと葛藤
大学職員の魅力は、長期的に大学の成長に関われることです。入学から卒業までの4年間を見届けたり、新しい制度設計を現場に落とし込んだり——それは“教育を支える裏方”だからこそ味わえるやりがいです。
一方で、少子化や社会の変化に伴い、「大学の存在意義は何か?」「今の教育が本当に学生に届いているのか?」という問いに直面することもあります。そうした葛藤に対して、自分なりの軸を持って仕事に向き合う姿勢が、これからますます重要になるでしょう。
おわりに
大学職員という仕事には、表からは見えない奥深さがあります。
教育を支える裏方として、時に制度をつくり、時に人をつなぎ、時に改革の火付け役になる——そんな可能性がこの仕事にはあります。
これから大学職員を目指す方には、ぜひ一度、自分自身の「なぜこの道を選ぶのか?」を立ち止まって考えてみてほしいと思います。
その問いに自分なりの答えを持つことが、選考でも、入職後でも、きっと大きな力になるはずです。
以上、お読みいただきありがとうございました。